「Moray West」で最初のモノパイル設置完了
2023年10月5日、Ocean Windsはスコットランド沖で建設中の「Moray West offshore wind farm」で最初のモノパイル設置が完了したことを発表しました。
モノパイル設置作業をおこなったのは、4,000トン吊りクレーン船「Bokalift 2」。
「Moray West offshore wind farm」の概要
「Moray West offshore wind farm」は、EDP Renewables と Engie の合弁会社 Ocean Winds および Ignitis Group によって開発されており、Siemens Gamesa「SG 14-222 DD」60基、洋上変電所2基の設置を計画している。変電所2基を含むすべての基礎は、モノパイルを採用。総発電容量は882MW、風力タービンの単機出力はパワーブーストにより14.7MWへ引き上げられる予定。
4,000トン吊りクレーン船「Bokalift 2」
2000年に建造され、アメリカのTransoceanが所有していた掘削船「GSF JACK RYAN」を改造し、2022年に4,000トン吊りクレーン船として誕生した「Bokalift 2」。まだクレーン船としての稼働期間は短いですが、台湾、アメリカ、そしてスコットランドと世界中を走り回って作業しているようです。
船名 | Bokalift 2 |
クレーン能力 | 4,000トン |
長さ | 231m |
幅 | 49m |
深さ | 21m |
DPS | DP2 |
建造年 | 2000年 |
2基の洋上変電所用モノパイルを含む3基分のモノパイル積み込み
2023年10月3日にOcean Windsが掲載した情報によると、初回分としてスコットランドのインバーゴードンでクレーン船「Bokalift 2」に積み込みされたモノパイルは3基。その内2基は洋上変電所用のモノパイルが含まれているという。船上に置いてある機材の量が多く、この状態で3つのモノパイルを積んだのは驚異的。どうやって限られたスペースに3基のモノパイルを積んだのか気になりますが、積み込み後の画像は公開されていませんでした。
インバーゴードンのヤードには、使用する62基のモノパイルのうち26基が搬入されているそうです。モノパイルの大きさは長さ約80m、最大直径10m、重量2,000トン。スペインと中国の2箇所で製造されており、14基の製造をNavantia Seanergies と Windar Renovables、残りの48基は、中国の大金重工有限公司(Dajin Offshore Heavy Industry)が製造。
モノパイル設置にはバイブロハンマーを使用
モノパイル設置にバイブロハンマーを使用する現場は今のところ世界的に見て少なく、油圧ハンマーによる施工が一般的。そんな中、”バイブロ使用”という点で「Moray West offshore wind farm」には注目しています。同様に、フランスのカルバドス洋上風力発電所も。
CAPE VLT-640 TRIPLE FOR BOSKALIS’ MORAY WEST MONOPILE INSTALLATION SCOPE
(BOSCALIS の MORAY WEST モノパイル設置範囲のために CAPE VLT-640 Triple)
https://capeholland.com/news/cape-vlt-640-triple-for-boskalis-moray-west-monopile-installation-scope/
2023年5月にCAPE Hollandは、「MORAY WEST」でのモノパイル設置用にBoskalisへバイブロハンマー「CAPE VLT-640 Triple spread」を納入する契約を獲得したことを発表しています。
バイブロハンマー「CAPE VLT-640 Triple spread」は、「CAPE VLT-640」を3つ並べて3連仕様にしているモンスターバイブロ。そして、クレーン船「Bokalift 2」の甲板上で横倒しの状態になって運搬するモノパイルを建て起こすためのupend機能も搭載。最大重量2,000トンという巨大なモノパイルを取り扱うため、安全使用荷重は2,200トンに設定されている。偏心モーメントは640×3=1,920㎏m
CAPE Hollandの記事によると、土質条件の悪い場所でのモノパイル設置にバイブロハンマーを使用する予定ということなので、全数で使用する訳ではないという。そして、バイブロハンマーを使用する場所でも最終の打ち込みには油圧ハンマーを使用すると書かれているので、パイルランリスクの回避が目的のようです。
Ocean WindsがLinkedInに掲載した最初のモノパイルを設置する画像を確認すると、建て起こされたモノパイル上部に取り付けられているのはバイブロハンマーではないように見えるので、モンスターバイブロの登場はもう少し後のようです。
出典:OW Ocean Winds
出典:CAPE Holland
日本の石狩湾新港でも CAPE Holland のバイブロハンマーを使用
型式 | CAPE VLT-320 |
メーカー | CAPE Holland |
偏心 モーメント | 320㎏m (32,000㎏㎝) |
起振力 | 6,853kN (約699トン) |
出典:CAPE Holland
CAPE Holland のバイブロハンマーは、日本で建設中の石狩湾新港洋上風力でも使用されていました。森長組の1,800トン吊りクレーン船「第一豊号」でジャケット基礎杭の打設に使用されたのは「CAPE VLT-320」。これでも日本国内で見かけるバイブロと比較すれば最大級クラスですが、偏心モーメントで言うと「CAPE VLT-640 Triple spread」の1/6。
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